このブログで以前にも取り上げたことのある 『ラストダンス』 を紹介します。
ソシアルダンスが文化として根付いている欧米社会では、結婚披露宴の演出にダンスタイムは欠かせない余興アイテムといえるようです。
新郎と新婦が踊ることを 『ファーストダンス』 と呼び、ふたりにとっての思い出の曲に合わせて、夫婦となって初めてのダンスを披露します。
その後は会場全体がダンスフロアと化し、列席者を巻き込んでの一大ダンスパーティーに様変わりしてしまうなんていうことも、アメリカの結婚式ではよく見られる光景のようです。
私にとって、アメリカのダンスシーンを連想するときに真っ先に思い浮かぶのが、’85公開の映画 『バック・トゥー・ザ・フューチャー』 です。
主人公のマーティー(マイケル・J・フォックス)が学園祭のダンスパーティーで演奏する「ジョニー・B・グッド」のシーンは、この人気映画3部作の中でも屈指の名場面といえるでしょう。
もし、仮に、マーティーの未来の両親となるジョージとロレイン(この学園祭がきっかけで結婚にいたる)が披露宴を挙げるシーンがあったとするならば、そのときのファーストダンスには、ひょっとしたら 「ジョニー・B・グッド」 が選曲されていたかもしれませんね。
アメリカの青春映画を見るたびに、こんな世界が羨ましいなと、遥か遠くの大陸に想いを馳せていたことが懐かしまれます。
だからといって、このいかにもアメリカらしい余興を、そのまま日本のウエディングシーンに持ち込むのはいささか無理があるでしょう。
奥ゆかしい気質をもつ日本人にアジャストさせるには、西洋化が進んだ現代といえどもハードルは高そうです。
しかしながら、私は友人の結婚式でこのダンスの余興を目の当たりにして、いたく感動を覚えたのです。
それは、ファーストダンスと連動しておこなわれる、『ラストダンス』 という名の、新婦の父と新婦が踊る、文字通り父娘としての最後のダンスでした。
ラストダンス
結婚式とは、愛するふたりが婚姻を結び、新しい人生を歩みはじめる門出の儀式ですが、一方で、新婦の父にとっては、それまで手塩にかけて育ててきた愛娘を手放さなければならない卒業式ともいえます。
私は常々思うのですが、新婦の父は、この日を迎えるにあたり、果たしてどこまで気持ちの整理をつけられているのでしょうか?
そもそも、結婚式を迎えるまでに、まず、避けては通れない場面設定があります。
それは、相手方の男性から、結婚の許しを請う挨拶のための訪問です。
ここで、新婦の父は、それまでにもうほとんど感づいているはずのことが、はじめて現実として目の前に突きつけられるのです。
そのとき、新婦の父の胸の内では一体どんな感情が渦巻いているのでしょう。
揺れ動く感情は、父親としての威厳によって、グッと押さえつけて面に出ることはありません。それは、本人にしかわからないことなのです。
ラストダンスは、そんな日本の父親にとって、実は優しく手を差し伸べてくれる演出なのではないかと、先にあげた友人の結婚式で、父と娘が楽しそうに、そして照れくさそうに耳元で囁きあいながらステップを踏んでいる姿を見ていてそう感じました。
おそらく、身に纏っていた鎧をここではじめて脱ぎ捨てたような、それは、穏やかでリラックスした男の背中でもありました。
このような場面を目の当たりにすると、ひょっとしたら、日本人の奥ゆかしさ、とりわけ威厳を保ち続ける父親にとって、予想以上の効果を伴いアジャストするのかもしれないと、我が演出アイデアリストにインプットせざるを得ません。
『ラストダンス』 の演出は、最高の親孝行のプレゼントになるかもしれない期待値を含んでいるようです。
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