開店・移転祝いに胡蝶蘭|胡蝶蘭の名産・宮崎県の生産者を訪問②

健康的な胡蝶蘭の苗

 

胡蝶蘭の栽培には長い年月が掛かります。
詳しいことは以前にもこのブログで書いたので省略しますが、なにしろ強い忍耐力が要求されます。

今は、どの生産農家も台湾から輸入した苗を育てているそうですが(輸入物といっても日本人の資本、技術指導によるものが多くを占めるそうです)、今回訪れた生産農家では、その中でも特に赤ん坊のような小さな苗を輸入するため、平均的な生産農家に比べ栽培過程に多くの時間を費やしているそうです。

 

ミニポットに入れられた胡蝶蘭の苗の赤ん坊
ミニポットに入れられた胡蝶蘭の苗の赤ん坊

 

■長期間管理にこだわる自主栽培

合理性を求めるのであれば、もっと成長した苗を輸入するべきです。
そうすれば短いサイクルで出荷することができます。
栽培期間の短縮は、そのまま管理・維持コストの削減につながります。
現に、そのような栽培方法にシフトチェンジしている生産農家が大半を占めています。

なぜ、こちらの生産農家ではそれをしないのか?

ご主人はこう答えます。

「ある一定の大きさまで育った苗だと、輸入梱包時に葉っぱに傷がついてしまうんです。」

その言葉を聞いて、足元の苗をもう一度じっくり見直してみました。

 

傷ひとつない胡蝶蘭の苗
傷ひとつない胡蝶蘭の苗

 

たしかに、どの苗を見渡しても傷ついたものはひとつとしてありません。
艶と張りのある青々とした葉っぱは、品質管理に対する高い意識の賜物となってスクスクと育っています。

そして、ご主人のこだわりはまだあります。

 

■農薬に頼らない管理の理由とは?

農薬散布。

輸入苗が到着した時に一度農薬散布をしますが、それ以降は一切農薬は使わないそうです。

その結果、病気を発生させてしまうこともあるそうです。
そのときは、病気を発生した苗はもちろんのこと、そうでないものでも、周囲の苗を広範囲にわたり躊躇せずに廃棄してしまうのだそうです。

これは、病気の感染を未然に防ぎ、損害を最小限にとどめるための処置です。
笑顔であっけらかんと語ってくれてはいますが、わが子のように手塩に掛けて育ててきた苗を、無情にも廃棄せざるを得ないそのときのご主人の気持ちを察すると胸が痛みます。

しかし、それでも、ここで働く30名を超えるスタッフのことを思うと、やはり農薬を使うわけにはいかないのだそうです。なぜなら、ここで働くスタッフのほとんどが地元のお母さん方。母体や小さな子供たちへ影響を及ぼさないことを最優先に考えての方針なのです。

 

この農園で働くスタッフの方々
この農園では若いママさんも主力となって働いています

 

ひとりのママさんスタッフにお話しを聞いてみました。
一日に20鉢近くの胡蝶蘭をしつらえる業務をこなしているそうです。
丁寧に手先を動かしながら 「この農園で働くことはとても楽しい」 と語ってくれました。
安心して働ける環境作りをする社長と、その環境の中で楽しんで働く従業員の、確かな信頼関係がうかがえます。

 

■胡蝶蘭栽培に革命をもたらした『プレサブ・バーク』

胡蝶蘭の苗を、赤ん坊のような小さな段階から輸入する理由は他にもあります。

それは、栽培方法へのこだわりです。

この農園では、『プレサブ・バーク』 による栽培を行っています。
『プレサブ・バーク』 による栽培は、胡蝶蘭の生長を劇的に促すことに成功しました。

しかし、園芸先進国ヨーロッパから伝わったこの『プレサブ・バーク栽培』 を採用している生産農家はまだ少数派です。
そのため、従来の水苔で栽培された苗を少しでも早い段階から輸入し、『プレサブ・バーク』 へ移し変える必要があるのです。
(『プレサブ栽培』について詳しくお知りになりたい方は、当ブログ関連記事をご覧ください。)

当然、栽培工程とそれにかかる経費、農地の確保は余計に増えることになりますが、すべては最高品質の胡蝶蘭を生み出すため。胡蝶蘭生産家としての矜持がうかがえます。

こうしたこだわりというのは、もともとが胡蝶蘭の苗の “生産” (今は栽培)を家業にしていたルーツがあることも、理由のひとつと語ってくれました。

 

胡蝶蘭栽培に革命を起こしたプレサブ・バーク
水苔からプレサブ・バークへひとつひとつ植え替えていきます

 

 

■胡蝶蘭生産家としての覚悟

わずか数時間ですが、ご主人と行動をともにしていて強く感じることがありました。
それは、胡蝶蘭に対する底なしの愛情です。
胡蝶蘭の話をしているときの表情はとても豊かで真っ直ぐです。迷いがありません。

胡蝶蘭栽培を家業にしている人であれば当然のことかもしれません。

けれども、さらにいろんなお話をうかがっていくうちに、その印象は少しずつ変化していきました。

一日の行動は、起床時間に始まり時計の針を睨みながらすべて胡蝶蘭に合わせて決まるのだそうです。

一日でも農園を空けると不安だから、家族揃っての宿泊旅行はしたことがないと言っていました。ご主人か奥様のどちらかは必ず留守番をするのだそうです。

胡蝶蘭のために良いと聞けば、何百万円単位で掛かる設備費用も惜しみなく注ぎ込むそうです。(毎月の電気代を聞いて目が飛び出しそうになりました)

こういった話をうかがっていくうちに、“胡蝶蘭に対する底なしの愛情” という表現よりも、“胡蝶蘭生産家としての揺るぎない覚悟”  と解釈したほうが適切のような気がしてきました。

とはいえ、このご主人が醸し出す雰囲気からは“覚悟” というような悲壮感は微塵も感じられません。泰然自若としたゆとりさえ見受けられます。

 

胡蝶蘭への想いを聞かせてくれた生産農家のご主人
胡蝶蘭への想いを聞かせてくれた生産農家のご主人

 

このご主人に限らず、宮崎県の男性にはみなさんこのような “ふところの大きさ” が備わっているのでしょうか?

宮崎県の気候、こちらの生産農家の方々の人柄を含めて、私の中での宮崎県の印象は、天井知らずに上がっていくばかりです。

次回は、いよいよこちらの農園で栽培されている胡蝶蘭を紹介します。

 

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愛情をいっぱい受けて咲いた胡蝶蘭