連続でお話してきた 色打掛と引き振袖の選び方 ですが、ひとまず今日で区切りとなります。
最後にお伝えするのは、それぞれの着物の形の特徴と小物合わせについてです。
ポイント③ 形と小物選び
前回 、 柄を選ぶ際のポイントとして立ち姿のとき目につき易い箇所をお伝えしましたが、それとは別にもう一点、形状に関することで、柄選びには直結しないものの花嫁さんをより美しく見せるためのテクニックを追加してお伝えします。
打掛と引き振袖に共通するシルエット。
それは、裾の部分です。
通常、着物を着る際は、おはしょり といって着物の裾を引きずらないよう帯のところで丈の調節をしますが、 打掛と引き振袖に関しては、あえて、おはしょりをあまりとらずに裾を引きずるようにして着用します。これは、花嫁さんを、より豪華に艶やかに魅せるための工夫でもあります。
そして、この場合、裾を引きずって足回りが絡まないようにと、裾の先端に ふき といわれる綿を入れて厚みを出した部分がつくられているのですが、この ふき は、強化遠近法の応用を利かして、実際よりも身長を高く見せる効果も兼ねています。
ものによってこのふきの部分にも違いがあると思いますので、なんかしっくりこないなと思った時には、ふきの厚みを比較してみても良いかもしれません。
試着の際には、こういった先達の知恵にも、ぜひ、着目してみてください。
それでは、小物選びについて話を移します。
打掛を着る際、胸元を飾る小物に筥迫(はこせこ)と懐剣(かいけん)があります。
筥迫とは、江戸時代に武家の女性が正装の際に用いた、現代でいうところの化粧ポーチに該当するものです。当時は箱型の紙入れとして、懐紙・鏡・紅・お香・お守りなどが入れられていました。
懐剣とは、前々回でも述べましたように、武家社会のころ護身用として身につけていた短刀のことを指します。武家の婚礼では花嫁道具のひとつとして、打掛を着るときに帯に着けるのが慣わしだったものです。
このふたつは色柄も豊富で、現代の結婚式でも打掛姿の花嫁には欠かせない装飾品です。
近距離からの写真撮影ではアクセサリーとなって顔の近くに写りこみます。
花嫁さんを引き立てる大切な役割を果たしますから、打掛とコーディネートしながら慎重に選びたい小物ですね。
一方、引き振袖ならではの小物類に関することもあります。
それは、帯 が目立つことです。
帯には着物とのコーディネートや、帯揚げ 帯締め とのコーディネート、また、帯には様々な結び方がありますので、帯を結ぶ楽しみもあります。
自分の目の届かないところの気遣いは重要なおしゃれポイント。帯の結び方ひとつでシルエットもだいぶ変わりますので、しっかり検討したいですね。
さあ、足元と胸元、後姿のチェックはこれで万全でしょうか。
残るは、手元です。
打掛では、末広と呼ばれる扇子を持つことが慣わしとされてきました。
末広がりで幸せになれるようにとの意味がこめられた縁起物です。
写真撮影の時は、手に何も持っていない状態だと手のやり場に困ってしまいます。
ここも、しっかり衣装とコーディネートして選びましょう。
さらに、ここでもうひと工夫して個性を出すとっておきの方法があります。
やってきました。お花の出番です。
和装に合うウェディングブーケ、
ボールブーケ
の登場です。
ボールブーケとは、日本に古くから伝わる手毬を模したウェディングブーケのことをいいます。
房飾りをつけたり水引を絡めたりすれば純和風な雰囲気になりますし、また、持ち手を色々なバリエーションで楽しむこともできます。
近年再び人気を集めている丸いフォルムがかわいいボールブーケ。
生花の髪飾りとのコーディネートで、瑞々しい華やかさを自分演出の一役に検討してみてはいかがでしょう。
さて、3回に分けてお伝えしてきた 色打掛と引き振袖の選び方 ですが以上となります。
原則に沿った話をしてきましたので、実情と違うところもあると思います。
たとえば、現代の和装結婚式においては、洋髪に綿帽子を被ったり、引き振袖に懐剣を携えるなどということが、しばしば応用されています。
オーガンジー素材の打掛や綿帽子といったものもあるみたいですね。
それをいうならば、和装用のウェディングブーケはいつのころから登場したものなのでしょうか?
時代とともに変化していくのは何事にも当てはまるもの。
伝統を受け継ぎながら提案する今をときめく新しいアイデアやアイテムも、時が経って、いつの日にか、その時代のわれわれの知らない新しい言葉で、ひと括りにされているかもしれませんね。
「贈る人も贈られる人も、一生の思い出に残るサプライズ」
フラワーアーティスト 和田浩一公式サイト