【 仕事を終えた夜のひとりごと 】
イメージを具現化する。
サンプル画像やイラスト・カラーチャートでどれだけシミュレーションを重ねようとも、生花ならではのニュアンスをお客様と共有することはなかなかに難しい。
付属のリボン選びではそのようなことがなかったので、なおさらにそのことを痛感した。
しかし、そうはいっても、”ゴールへ辿り着くまでの苦労が大きい分だけ、達成したときの喜びもまたひとしお” というのは、いかなる仕事・趣味・はたまた雑事に至るまで相通ずるものかもしれない。
今回の件においても、無事に使命を果たした後の杯には、普段の日常では味わうことのできない心地良さが伴っていたのだから。
そして、そんな至福の一杯をあおりながら、ひょっとしたら今回の件は、自分自身にとって生花のやりがいを再確認する機会だったのかも知れない、とふいに思い至ったのだ。
普段から私は、生花を主軸と捉えてアーティフィシャルフラワー(造花)やプリザーブドフラワーを比較対象と考えるとき、強い意志を持って生花への魅力・可能性の発見に知恵を絞ってきたが、まさに色彩の豊潤さは生花の最たる強みのひとつといえるだろう。
であるがゆえに、生花の持つ色彩のニュアンスを共有することが、非常にデリケートな作業になってくるわけだが。。。
あえて自分の都合で言わせてもらえば、最終的な色の組み合わせは、市場(仕入れ現場)で直接自分の目で確かめながら行うのが最適だと思っているので、情報や懸念材料が事前に多いとその場での判断に逡巡が生じてしまう。
しかしそれは私の未熟さであり、当日にならないとどんなものが納品されてくるかわからないという状況は、お客様からすれば、商品に対する期待値が高ければ高いほど、それに比例して不安も大きいものになることはいうまでもない。
では、これを解消するためには打合せ資料の充実を図ることが一番なのだろうが、上記の通り、仕入れ現場に行くと新たな発見に遭遇するから困ったものである。もう時間はない。
そこに生花の奥深さが潜んでいるのである。
ということは、不安解消の一番の方法は、何よりお客様と信頼関係を築き、
「あとは全てお任せします。」
と言ってもらうこと以外ないのかもしれない。
生花においては、写真と全く同じものを再現することは不可能に近い。
ということは、資料を厳密に作れば作るほど自分の首を絞めることになる。
唯一無二のモノを創り出す。
プロダクトのようであって実はアート作品。
こういってしまうのは花屋としてのエゴなのだろうか?
今回の一件は、私にとって、自分の現在値を考える出来事だったのである。