毎年この時期になると増えるお問合せがあります。
「観葉植物の葉が茶色くなってきたんですけど、これって病気でしょうか?」
「観葉植物の葉っぱがやけに落ちてくるんですけど大丈夫でしょうか?」
といった観葉植物の冬場の管理に関するものです。
実をいうと、私の自宅にある 『ソング・オブ・インディア』 という観葉植物も、この冬に葉がすっかり落ちてしまいました。
写真を見比べてみるとその違いは歴然です。
8月の時点でフサフサしていた葉が、今ではすっかり風通しが良くなっているのがお分かりいただけると思います。
適正温度と耐寒温度
観葉植物の多くは本来熱帯に生息するものです。
一般的には20℃~30℃が適正温度といわれています。
そんな観葉植物にとって、日本の冬は非常に辛いものになります。
写真の『ソング・オブ・インディア』 は去年の8月に購入しました。
購入以前は、生産者の元、温度や湿度の管理が行き届いた最適の環境の中で生育していたことでしょう。
そんな楽園生活から慣れない環境に移され冬を越すということは、観葉植物にとってみればそれは大きなストレスになります。
ですから購入1年目というのは、こういったことがよく起こり得るのです。
観葉植物の耐寒温度は種類によってまちまちなところはありますが、5~10℃くらいといわれています。冬場でも最低限その気温の中で育てることが条件です。
そうでないと凍傷を起こします。
冒頭にあげた「葉が茶色くなる」といった症状は、ひょっとしたら凍傷の恐れがあります。
陽の当たる窓際は日中はポカポカと良い環境ですが、夜になると冷気を一身に浴びることになります。そういったことを回避するため、朝晩で場所を移動させるか、あるいは発泡スチロールや段ボールなどで囲いを作ったり、いっそのこと窓ガラスを断熱シートで覆ってあげたりすると大分傷みは和らぐはずです。
そして乾燥がまた大敵です。
暖かい方が良いだろうと思って暖房をガンガンに効かせると逆効果になることもあります。そんな場合は、加湿器や葉に霧吹きをかけるなどして十分な保湿を与えることが必要です。
「葉が落ちる」 のはこの乾燥に起因していることが多いので、霧吹きをこまめにしてあげることで落葉防止に繋がるかもしれません。
冬の水やり
もうひとつ、植物を育てる大切な作業があります。
水やりですね。
植物は水がなければ育ちません。植物を生長させるには、欠かさずしっかりと水をあげる必要があります。
ところが、冬場は少しその条件が変わってきます。
実は、観葉植物は冬の時期は休眠します。
あまり栄養を必要としません。
そんなときに水をたくさん与えると、逆効果となり根っこが腐ってしまいます。
冬場の水やりの間隔は、土の表面が乾いたらあげる程度で十分です。
また、水やりの時間帯は気温の高い午前中が良く、少し温めた水を与えることも良いとされています。栄養剤は与えてはいけません。
水やりの話が出たのでひとつ補足しておきます。
これは冬に限らず年間を通していえることですが、水を受け皿に溜めたままにしてはいけません。溜まったままの水は必ず捨てましょう。そのまま放置しておくと根っこが腐る原因になります。
さて、色々と御託を並べましたが、観葉植物を育てることに嫌気がさしたなんて言わないでください。
私自身もまだまだ無知なところがあり、日々観察しながら接しています。
そして今あげたことをすべて実践できているわけではありません。
マニュアルはあっても、必ずしもそのとおり当てはまらないこともあるでしょう。
“生きもの” を育てるということは大変です。
しかし、自分なりの接し方を見つけることで生活にリズムが生まれ、目に見えないプラスアルファの費用対効果が得られるのも、観葉植物が “生きもの” だからではないでしょうか。
先日、ご注文をいただき観葉植物を納品してきました。
『ゲッキツ』 という品種です。 “月橘” と書きます。
この漢字は、
「月夜に甘い柑橘の香りが一面に漂う」
というところから来ているようです。なんともロマンティックですね。
別名 “シルクジャスミン” とも言い、夏に白いジャスミンのような花をつけ前述のような香りを放ちます。また、秋には実がなり熟すと赤く色づきます。
耐寒性もそこそこあり、四季折々の表情が楽しめる観葉植物です。
こんなことを書いていたら、なんだか無性に自分用に 『ゲッキツ』 が欲しくなってきました。
その前に、まずは、今現在居る 『ソング・オブ・インディア』 が無事に冬を越せるようしっかり観察し面倒をみていかなければいけませんね。
冬の観葉植物は、生長を促すよりも、損傷を最小限に抑えるという管理が、大きなテーマになってきます。
劇的花屋(ドラマティックフラワーズ)
フラワーアーティスト|和田 浩一